布団(短編小説「熟睡」)

熟睡

 何時まで寝てるのよ、と頭越しに妻は怒鳴り、玄関にごみ袋を放り投げた。代休なのに朝寝坊も出来やしない。混線した寝癖を水で撫で付け、ダウンコートを羽織った。一日出し忘れたからといってどうだというのだ。トイレの汚物をドラッグ...

夏祭りの屋台

たくらみ

 夏祭りの夜、少年は、とある企みが気掛かりで中々寝付けなかった。夜中に何度も目が覚めて時計を確認した。早く朝になって欲しかった。いや完全な朝ではなく、夜の終わりくらいの時間に。 4時半。隣に母の気配がないことを確認すると...

タイムカプセル

タイムカプセル

 実家の父親から送られてきたそのタイムカプセルを、晴美は床に転がしながら足の裏で弄んだ。普通の大人であれば、小学生の頃のノスタルジーに心ときめかせるはずが、今の晴美には、まるでどろりとした鉛のプールに浸かっているようだっ...

ラブテスター

愛の重さ

 「測る」ということ。それは谷田のライフワークだった。仕事で研究してきたこともあるが、今では自身の健康管理の為に計測することが愉しみとなっていた。 最初に、血圧と体温。接待の多い谷田にとっては、ただでさえ生活リズムや食習...

最後の忘れ物

最後の忘れ物

  近頃、電車に忘れ物をすることが多くなっていた。片道一時間半という通勤電車の中で、必ず一度は熟睡してしまうというのが原因の一つだった。車輛の揺れであったり、冷暖房の効いた車内の温度や静けさが、何とも心地良かった。音楽を...