不倫の末路

不倫の末路にある、あまねく倦怠的な

 ソファの肘掛けはひび割れていた。今までここで何組の男女が粘液を交わし合ったかを思うと、せめて下着くらいはきちんと着るべきだったと後悔した。「次はいつ会えそう?」 口紅を塗る前の最後の口付けを交わした後で、女は聞いた。「...

おにぎり

おむすび

 サランラップに包まれたまん丸のおむすびが一つ、路上に落ちていた。朝時間がない中慌てて握ったのか、海苔も巻いていないシンプルなおむすびだった。綺麗な街並みが人気の住宅地なので、道の中心にあるべきものとしては余りにも不似合...

こだわり

こだわり

 昨年九月十日、その日は既に不穏の気配を孕んでいた。空は厚い雲で覆われ、早朝から夕刻の様な暗さだった。台風は太平洋岸をなめるように進行していた。風雨に耐えられるよう、私はいつもの倍の時間を掛けて、入念にドライヤーを当てた...

水漏れ

水漏れ

 三日前からこんな感じなの、と妻は蛇口のレバーをゆっくり上下させながら言った。継ぎ目から、水が漏れていた。操作の仕方によって、じんわり染み出す時もあれば、飛沫が噴き上がる瞬間もあった。「直せる?」「パッキンだとは思うけど...

畜生

畜生

 ケージの扉は開いていた。内側から外す事は、いくら狡猾な動物でも容易い作業ではなかった。今朝、餌をやる時にロックをし忘れたのだと、母は悔いた。「帰ってきたらいなかったよ、ママ」と息子は言った。「家中探したけど、何処にもい...