大したことじゃないけれど、忘れない記憶。

本当、とるにたらないような記憶だけれど、忘れない出来事ってたまにある。

大学3年の頃の同じゼミの仲間からある日突然こんなことを言われた。

「あのさあ、高橋さあ、ささくれ、ってあるじゃん?あれにさあ、『金くれ』って言われたら、お前、どうする?」

最初、彼の言う意味がよく分からなかった。
前後の文脈もなくいきなりそういうもんだから。

ささくれ、とはつまり、いわゆる「ささくれ」である。
あの手指のサイドから、きっと何かの栄養不足もあるんだろうが、皮がむけてひどくなると血が出てくる、あれ。

そんなものから「金くれ」と言われたら、ってもしも、の話だとしても、ちっとも理解不能だったが、僕があまりにもつれない返事をするもんだから、しまいに彼は怒りだして、それから一週間くらい口もきいてくれなくなった。

卒業してからというもの、一度も彼には会っていないが、確か地方から出てきていて、Uターン就職で生理用品メーカーに就職したかと思う。
でも、ふとしたときに、僕は今でも彼の言葉を思い出す。
思い出す、というより、その問いは、時に脅迫的に僕の寝しなを襲い、いまだ明快な答えの見いだせない僕を執拗に攻め立てる。

「ささくれに、金くれ、って言われたら、どうする??」

いまどうしてるんだろ、K君。

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