蕁麻疹

【超短編小説】蕁麻疹

 腹回りの痒みから始まった蕁麻疹は、胸、背中、腕、足、頭皮に至るまで、あっという間に全身に広がっていった。私はいつもどこかしら掻いていた。痒みには波があり、場所もその時々で違っていたが、手が止まっていることはなかった。家...

双子の車

【超短編小説】凹み

 駐車場に二台の車が並んでいた。一台は男の車であり、もう一台は隣人のものだった。トヨタのコンパクトカーで、色もグレードも全く同じだった。唯一の違いはホイールだけだった。隣人の車には、オプションのアルミホイールが付いていた...

ヤーゴンの住む森

【超短編小説】ヤーゴン、再び

 山道を外れ、特別の場所に作られたこの住処までは、さすがのマスコミも一般人も足を踏み入れることはないはずだが油断は禁物だった。このところ夜になると、懐中電灯の明かりが、真夜中でも山道近辺にちらついているのが見えた。話題の...

呪縛

【超短編小説】呪縛

 久しぶりの実家だった。「孫を連れて顔を見せることが親孝行」と世間では言われているものの、どうやら僕の実家の場合は異なるようだった。 実家に行くのは、仕事以上にエネルギーと覚悟がいることだった。大して年金は貰っていない筈...