カテゴリー: 超短編小説
壁画の娘~銀座ライオンの恋
「銀座ライオン本店でデートすると、一ヶ月以内に別れる」 新橋に本社のある早生の社内では、最近そんな噂が流れていた。 「ライオンの祟り」だの「7丁目には戦前墓地があった」だの「米兵と日本人ウェイトレスの心中話」だの「二人の...
男と女が再びホテルで会う理由
「最後もこの部屋だった」 背もたれのひび割れたチャコールグレーのラブソファにバッグを置くなり、女は独り言のように言った。「狭い方が密着できるからいいんだよなんて、あなた」 床よりも物が置いてある面積の方が広いと一目で分か...
例えば、満月の夜の奇妙な行為、妻の変容と世界
「あなた、ちょっと起きてよ」 寝入りばなを妻に起こされ、私の意識はしばらく混濁していた。「こんな時間に、何の音?」 枕元の時計は午前一時を少し回っていた。大きく伸びをした後で、私は妻の注意する方向に聞き耳を立てた。ぱん、...