【掌編小説】ウォーキング
男はずんずん歩いた。男の足取りは軽かった。中年で独り身の男にとって、休日のウォーキングは何よりの楽しみだった。ウォーキングをしている間は何も考えなかった。頭の中は空っぽだった。家のこと、仕事のこと、将来のこと、言葉はも...
男はずんずん歩いた。男の足取りは軽かった。中年で独り身の男にとって、休日のウォーキングは何よりの楽しみだった。ウォーキングをしている間は何も考えなかった。頭の中は空っぽだった。家のこと、仕事のこと、将来のこと、言葉はも...
僕は毎朝、空の写真をアップしていた。起き抜けにベランダに出て、その時の空の写真をスマホで撮ってネットに投げた。それはもう日課だった。大した写真ではなかった。特別な操作はしなかったし、加工も補正もしなかった。ただスマホの...
男と女は、公園のベンチに腰かけている。二人の間には雑誌一冊分の隙間が空いている。他に人影はなく、時折強く吹く風が、古ぼけた欅の葉を揺らしている。男は空を見上げる。三つ程星は確認できたが、それ以外は何も見えない。昔はもっ...
もうすぐ三十路を迎えるその女には、ある性癖があった。使い古した下着を捨てられないことだ。少なくとも高校生の頃から買った下着は一枚たりとも捨てることなく、タンスとクリアケースに保管していた。時々引っ張り出しては、一枚ずつ...