階段

【掌編小説】階段

 僕らは階段を昇っていた。確か、どこかの商業施設の階段だった。おかしな話だが、何のために階段を昇っているのか目的を失念していた。目的が分からない故、どこまで昇るべきなのか目標も不明だった。 妻に確認を求めてみたかったが、...

極夜

【掌編小説】極夜

 太陽が失われて、既に三か月近くが経過していた。屋外は一日中、暗闇だった。もちろん、駅前の街灯やコンビニの明かりはあるものの、さすがに太陽の光には敵わなかった。電気代も馬鹿にならなかった。単純に三倍近くになった。妻は節電...

静けさ

静けさ

 池は、いつも静謐だった。都会の住宅地にあるとは思えない程、辺りは鬱蒼とした木々に覆われ、水面はどこまでも暗く深かった。「立ち入り危険」の看板と規制線を侵して、少年は池を眺めるのが好きだった。細かな泡がぷつぷつ湧き上がっ...

ぼんやりした夫婦

ぼんやりした夫婦

 帰宅すると、妻はそのまま私をリビングに招き入れ、【ぼんやりとした不安】を見せた。ここまではっきり分かる程巨大化してるとなると、もう随分前から存在していた筈だった。その見た目からして何らかの形で処分しないと、いずれ我々の...

ティーグラウンド

ティーグラウンドより愛をこめて

 砲台になったティーグラウンドの遥か彼方に、最終ゴールの旗が見える。下ろしたてのボールにドライバーヘッドを合わせ、肩幅よりやや広めに足を開く。雲の継ぎ目から陽は零れ、名も知らぬ野鳥の囀りが無駄な力みを解きほぐす。男の一挙...

ラブテスター

愛の重さ

 「測る」ということ。それは谷田のライフワークだった。仕事で研究してきたこともあるが、今では自身の健康管理の為に計測することが愉しみとなっていた。 最初に、血圧と体温。接待の多い谷田にとっては、ただでさえ生活リズムや食習...

かすがい

かすがい

 逃げる様に家を出た。最近顔を合わせれば喧嘩ばかりしていた。自身はともかく、一人娘が不憫でならなかった。こんな環境で勉強なんて出来る筈ないと思った。 私は車を走らせ、塾帰りの娘を迎えに駅に向かった。「子はかすがい」と言う...