いつものホーム。
いつもの面々。
人波に押され、急ぐ改札。
人いきれの中、懐かしい匂いが僕を捉える。
とても良く知っている、香水の香り。
僕は後ろを振り向く。
こんなところにいるはずがない、と分かっているのに。
抱きしめる度に何度も嗅いだ、あいつの匂い。
あいつについてはっきり覚えていることがあるとすれば、キスの上手さと、この特徴のある、強い香水。
時が経ち、既にお互い相手のある身、もう幾度となく、忘れようと努力しているのに。
今日もまた、あいつと同じ香水をまとったどこかの女が、何も知らずに、僕の側を通り過ぎていく。