小説のアイデア記録法

高橋です。
前回のブログテーマ「アイデア発想法」では、突然天から降りてきた「印象的なシーン」から、小説のイメージを膨らませる、という話をしました。

そのイメージで頭が一杯になって、小説を書き終えるまでずっとそのことに拘り続けられればいいのですが、気分屋で気まぐれで浮気症の僕としては、書いている最中にも別のイメージ(次作候補になりうる小説アイデア)に囚われたり、日常の中でアイデアの卵のようなものに出くわすことも多々あります。

■スマホの「メモ帳」アプリにただひたすら

そんな時、とても面白そうな閃きや次回作の候補になりそうなアイデアについては、何らかの形で残しておきたいと思います。一編書き終えた後、コンスタントに次作に進めるよう、印象的なイメージのネタはいくつあっても足りることはありません。

よく「お笑い芸人」は「ネタ帳」と呼ばれる「アイデアノート」を使っている人が多いと聞きます。

僕も以前は、B6サイズの小さな帳面を、いつも鞄や枕元にペンと一緒に置いておき、浮かんでは消え、浮かんでは消えていく小説の捕えどころのないアイデアのシーズを、思いつくままにメモしていた頃がありました。

ただ、ノートだと、スーツの内ポケットには入らないし、思いついた瞬間ささっと書き留めたいのに、いちいち鞄を開けてノートを取り出すという行為が、時と場所によっては酷く億劫になってしまい、あまり頻繁に活用することはありませんでした。

その後はノートに替わって、ガラケー、今ではスマホがその役割を担っています。殆ど身から遠ざけることなく携帯している訳なので、歩いている時とか満員の通勤電車の中でさえ、ひらめいたアイデアの断片をぱぱっと記録することができます。
具体的には、スマホの「メモ帳」アプリを使っています。デフォルトで入っているものでもいいですし、使い勝手のいいものを、アプリのフリーマーケットからダウンロードしてきてもいいと思います。

メモ帳アプリ思いついたら、「新規」で追加し、その象徴的な「キーワード」だけを書き留めていきます。
僕は短編小説しか書きませんから、キーワードだけで大よそ用は足ります。登場人物も少ないので、「キャラクター相関図」なんてものも不要です。物語のフローや章の連関も見える化しなくて何ら問題ありません。何せ、超短編やポケットノベルですから、フラッシュアイデアが命、一番印象深いシーン、オチや山場がイメージできるキーワードさえちゃんと記録できていれば、それでオーケーです。

なので、僕の「メモ帳」のフォルダには、ファイル数ばかりが矢鱈多くて、どれもキーワードが一つ~五つ程度、並んでいるだけです。一つだけ、というのも結構あります。

ちなみに、最近の「メモ帳」を上から順に見てみると、こんな感じです。

●手足があるのに、ないという感覚
●何でもバランスをとる、ということ
●双子 駅のホーム 兄弟 激やせ 激太り
●祭り お金 浮浪者 取り合い
●人工知能 結婚相手 マッチング

自分以外の人が見たら、何だこれ、という感じですよね(笑)
多分、個人のイメージの断片って、第三者が見たら、大よそ意味不明なものなんでしょうが、こんな言葉の羅列ばかりが、時系列でどんどん溜まっていくことになります。

■過去のアイデアには縛られずに~アイデアは「鮮度」が大事~

最近のものはまだ印象に強く残っているのでいいのですが、昔のものだと大変です。後になって、「え? 何、これ」とどうしても思い出せなくなってしまうものが出てきます。

まがりなりに一瞬でも、自分の意識から湧き上がってきたものである筈ですから、そのうちいつか、また「ぱっ」と思い浮かぶだろう、と思って消さないでいる訳ですが、これがもう3年以上も「何だったっけ」となっていて、しかし消せずにいるキーワードがあったりもします。

例えば、
●ディズニーランドの経済学
●マンホールおばさん

経済学者じゃあるまいし、今更自分が真面目にオリエンタルランドの経営分析をするわけではない筈ですから、何か小説のアイデアの種があった筈なのですが、全く思い出せず。このようなタイトルの経済本を読んだことがありますので、そこからのインスピレーションなのかもしれませんが。

「マンホールおばさん」も、もう意味不明です。
マンホールおばさん…
マンホールおばさん…
ううむ。自分が発想したくせに、全く思い出せませんし、話が膨らみません。

でも、メモしている時は、間違いなく「これはいい」「面白くなるぞ」と思っていたのは事実ですから、全く記憶の域外に排除してしまうのはもったいないよなあと思いつつ、早3年の月日が過ぎてしまいました。こんなことなら、もう少し細かく詳しくメモしておけばよかった、と今更になって後悔しきりです。

とはいえ、小説のアイデアにも「鮮度」というものがある気がします。
「夢」と一緒で、「印象深いイメージ」を想起した直後が、一番生々しくリアルな筈です。

従って、最近は、あまり「過去のネタメモ」に執着しないようにしています。無理に妄想を押し進めて、結果気乗りのしないプロットを追いかけていくよりも、今一番旬にひらめいたアイデアで書き始めた方が、良いものが書ける気がします。
これは経験則として、そう思います。

過去のネタについては、一度意識の奥深くに沈めて、また「語られたがる」時が自然発生的に来ることを、半分忘れてしまったら、それはそれでも構わない、という大きな心持ちで待つことにします。

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