長年に渡り小説を書いていると、アイデアが全く思い浮かばなくなる時期がある。
アイデアを絞りだそうとすればするほど、真っ白なキャンバスを前に何一つ身動き取れない状況というか、プロゴルファーが突然パットできなくなるイップスに陥ってしまうような時。
そういう状態がしばらく続いた時には、それ以上アイデアを考えるのは止めて、書くことそのものからも離れて、全く別の活動に精を出すことにしている。仕事に熱中するとか。ゴルフの打ちっぱなしに熱心に通うとか。誰かをめちゃくちゃ愛するとか。
すると、考えてないのに、ふとした意識の狭間からぽっかりアイデアの卵が浮かび、再び書いてみようという衝動に駆られるようになる。
物書きにとって「書かないでいること」はとても勇気がいるけれど、僕のスランプ脱出法は「しばし書くのを止めること」である。