私が勝手にそう呼んでいる、
あなたの外回りと、
私の仕事の休みが重なる唯一つの時間、
あなたには奥様もお子さんもいるから、
週末の休みを一緒に過ごすことはできないし、
太陽の下で手を繋ぐこともできないし、
二人で夜明けを迎えるなんてもちろんできない、
それでも、あなたは月曜の朝になると、
私の自宅のちょっと先まで車を乗り付けて、
ありふれた日常から私を引きはがす、
誰にも邪魔されない、
ラブホテルの一室で、
あなたの心も身体も独り占めにする、
私の中であなたは一〇〇%だけど、
あなたの中で私が全てになることはない、
あなたには奥様とお子さんがいる、
それは最初から分かってること、
一人身の私と違って、
あなたには守るべき人がいるのは承知の上で、
私はあなたに近づいた、
人を好きになるのに理由はなく、
あなたを好きになるにも理由なんてない、
偶然好きになった人に妻子がいたというだけのこと、
非常識と思われてもいい、
気持ちに嘘は付けないから、
あなたと知りあってから間もなく二年、
ゴールがどこにあるかなんて分からないし、
そもそも私たちの関係に、
ゴールがあるのかさえ分からないけれど、
ただただ、あなたのことが好きだという気持ちだけで、
今日も身体一杯、
あなたの愛情を受け止める、
あなたと身体を重ねれば重ねるほど、
あなたの時間全てを私のものにしたい気持ちが、
日増しに強くなっている、
どうにもならないことは分かっているのに、
これ以上あなたを求めてしまえば、
この関係も幸せも壊れてしまうかもしれないのに、
奥様とあまりうまくいっていない話とか、
子供関係のお付き合いが大変そうな話をあなたは時々するけれど、
だからといって私があなたを救えるわけじゃなく、
助けてあげることもできない、
いっそのこと壊れてしまえ、だなんて、
あなたが不幸になるのを望んでる、
冷酷で独りよがりなもう一人の私がいる気がして、
自分でも時々怖くなる、
月曜日しか会えないことが辛い、
月曜日はあなたと会えるけれど、
幸せな週末の余韻までも、
あなたはワンボックス一杯、運んで来てしまうから、
マクドナルドのハンバーガーやポテトの匂い、
ドアポケットに挟まれたディズニーランドのパンフレット、
チャイルドシートの食べかす、床に転がるティッシュ、
あなたはそんなに気にしてないかもしれないけれど、
私にとっては永遠に踏み込めない領域、
あなたをどれほど愛しても、
あなたからどれほど愛されても、
あなたの家族を飛び越えることはできない、
ポテトの匂いを残したり、
ティッシュを車に落とすことはできても、
私の香水やイヤリングを車に落とすことはできない、
あなたの日常生活の中に、
私は存在してはいけない女、
二人の関係を続けていく以上、
私はこれからもずっと、
我慢しなければいけないこと、
でも最近、
私もあまりに辛いから、
あなたもあまりに無頓着過ぎるから、
私はちょっとだけ悪魔になっていたずらをする、
助手席の座面と背もたれの隙間に、
私が生まれた年の硬貨ばかりを、
あなたに気付かれないように、
会う度一枚ずつ差し込んでいく、
馬鹿げてると思うけど、
あなたの日常に私の存在が全くないのは、
あまりにも寂しすぎるから、
月曜日の恋人は、
今日もまたいつものように車を停めて、
わたしを根こそぎさらっていく、
週末の記憶も、
私の気持ちも、
丸ごといっしょくたにして。