たった一人のために書く小説。

たった一人のために書く小説。

そんな小説があってもいいのではないか、と思っています。
もちろん、「一人」とは、自分のことではありません。
この広いインターネットの世界の中で、偶然(必然?)、僕の存在を知り、少しでも足を止めていただけた、僕以外の「誰か」という意味です。

広いインターネットの中で■小説のアップ時に必ず押される「拍手」ボタン

かつて、僕はもう一つブログサイトを作っていて、そちらにも本サイトと同じ小説を公開していました。ブログでは、Facebookでいうところの「いいね」ボタンに該当する「拍手」ボタンというものがありました。

そのブログは、どちらかというと、ホームページのアクセス数をアップさせる為に、リンクを増やすことを意識して作成したサイトなので、一生懸命そこを宣伝するようなことはしませんでしたし、本サイトをご覧いただいている方であれば、見る必要のないサイトでしたので、ダイレクトにそのサイトで小説を読んで貰える可能性など、極めて低いサイトでした。

ところが、ブログで短編小説をアップする度に、翌日、必ず「1拍手」が記録されているのです。しかし「拍手」ボタンを押していただいている方が、一体どこの誰かは全く分かりません。

サイト自体への訪問者数やページビューは、ブログの管理画面で大よそ知ることはできますが、実際に訪問された方が、間違いなく小説を読んで頂いているのかどうかは分かりません。また、感想などのコメントがないと、その小説がその方にとって「良かった」のか「まずかった」かも分かりません。

しかし、僕のブログを必ずチェックしてくれていて、能動的に「拍手」ボタンを押してくれている方がこの世には最低一人はいる、という事実を知りました。

■特定の読者を想定して書く「ペルソナ短編小説」

拍手ボタン一つ押されたからといって、小説を読んでもらえたのかどうかの証拠を示す物でもありません。ただの「励まし」かもしれませんし、間違えてクリックしただけかもしれません。

けれど、小説をアップした翌日には必ず押されている「拍手」ボタンを、僕は正直嬉しく思いましたし、自分の小説を待ってくれている方が確実にいる、という確証のようなものを得ることが出来ました(「勝手に思い込むことが出来た」という方が正確かもしれません)。

その時、ふと思いました。どこの誰が、この拍手ボタンを押してるのかは分からないけれど、その「たった一人」の人の為に書く小説があってもいいのではないか、と。

もう少し具体的に言うと、その「たった一人」がどういう人なのか、こちらが詳細に想像して、その人の嗜好を満足させることのできる小説というものを意識的に書いても良いのではないか、と考えました。

主婦の憩い以前にも書きましたが、マーケティング用語で「ペルソナ」という考え方があります。何かの商品開発をする時に、それを購入し使用するのは一体どんな属性や生活環境、生活様式を持った人なのかをかなり詳細に設定する、そのイメージ像のことを「ペルソナ」と呼び、そのペルソナを購買者と想定してマーケティング活動を行っていくことです。

■逆ファンレター小説

僕の小説が、実際どういう方に多く読んでもらえているのかというのは正確には分かりませんが、少なくとも、十~二十代の若い方というよりは、四十代以降、僕と同世代かそれ以上の方が多いのではないかと推測しています。男女の割合もほぼ半々ではないかと。これは、今まで感想コメントを入れて頂いた方や、アマゾンのカスタマーレビューなどを読んでいると、そんな感じなのかなという程度の想像です。

もっとも、夫婦関係の在り方や機微なんてものをテーマにした短編が多い僕の小説を、まだ未婚の若い方が好き好んで読む、ということはあまり想像できません。
(とは言いながら、僕自身は学生の頃、夫婦の諍いや情事を描いた小説を「覗き見的」に読むのが大好きでしたけれど)

「自分が書きたい物を、自分の思うがままに書いていく」というスタイルは理想ですし、そうありたいとは思いますが、時には、「たった一人」の読者を綿密に想定した上で、その方が満足するような小説とは一体何だろうということを考えながら書く、というのも、書き手として、また違った愉しみをもたらすのではないかと思っています。

それは、まるで一方的な愛情表現、ラブレターにも似た感覚なのかもしれません。相手が男性であれ、女性であれ。逆ファンレターのような。

ファンレター実際、そのブログを閉鎖してからも、僕はその方が本サイトに訪れているものだと勝手に思い込んで、その方のことを想像し、何本かの小説は、そうしたモチベーションで書いたことがあります。このサイトには、「拍手」ボタンはありません。けれど、僕は密かに、たった一人の方にラブレターを書くような気持ちで、これからも時々、小説を書いてみたいと思っています。

その方からの、たった一つだけの「拍手」を貰う為に。

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