執筆環境の整え方

小説を書いている人の「執筆環境」というのは、本当に人それぞれだと思います。
書斎のソファに腰深く座り、いらいらと頭を掻き毟りながら、机上のキーボードをただ黙々と叩き続ける、というのが一般的なイメージだと思いますが(ちょっと古臭い?(笑))、家ではなくファミレスや図書館じゃないと書けない、という人もいたり、集中力やモチベーションを維持する為に、ある「個人的儀式」(「五郎丸ポーズ」みたいな)を終えないと、執筆に入り込んで行けないというのもあるかと思います。

本当に個人的なことですが、今僕がどんな執筆環境の中で書いているかについて、ちょっとだけ。

執筆環境要素1 「完全無音・完全個室」

周囲に「」があると全く集中できない為、自室に籠ります。BGMも一切駄目です。マンションの上階の住人の足音も、バイクの音はもちろん、PCのCPUファンの音さえ気になります。従って、家人もうさぎも眠っている、そうした雑音が一番少ない早朝が、僕の執筆時間です。
→【関連記事】「早朝4時に小説を書くということ

ファミレスとか喫茶店で執筆するというのは、僕の場合、ありえません。周りが気になって気になって。視野に「動き」が入ってくるのも、目で追ってしまうので駄目です。ああいう衆人のいるような場所で、机広げて勉強できる人が信じられません。

でも世の中には、ああいう場所の方が集中できる、なんていう人がいるので、面白いですね。
娘の話で恐縮ですが、僕の高校生の娘は、音楽を流していないと集中できない、と言います。イヤホンをしながら教科書開けているので、てっきり英語のヒアリングでもやっているのかと思ったら、「真田丸」の戦闘シーンのサントラ!を聴いているのだと。モチベーションが上がるらしいです。成績は思ったようには上がってないようですが。

執筆環境要素2 「アロマ」

まず、朝起きたらトイレに行き、冷水をコップ一杯飲んだら、無印良品で買ったアロマディフューザーに水を注ぐことからスタートします。オイルは単一ではなく、ブレンドして使うことが多いです。

アロマオイル「眠気覚まし」と「集中力を高める」両方の効果を兼ね備えているレモングレープフルーツを多用しています。柑橘系は好物です。ミントユーカリ、ローズマリーなどのハーブ系もグッドです。もちろん、アロマディフューザーの香りだけではなく、ヒノキのような木材や、コーヒーの匂いなども、執筆を促進させる重要な芳香です。

「香り」や「匂い」に関しては、自身かなり敏感ですし、完全無音状態と合わせて、僕の執筆環境には重要なファクターです。
変な話ですが、街の雑踏や駅などで、昔の彼女と同じ香水がすると、つい振り返ってしまいます。顔や体の印象は色褪せても、匂いの記憶だけはいつまでも色褪せません。すいません、余談でした。

執筆環境要素3 「いにしえの名言

心が変われば、態度が変わる。
態度が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、習慣が変わる。
習慣が変われば、人格が変わる。
人格が変われば、運命が変わる。
運命が変われば、人生が変わる。

様々な分野の著名人が度々引用しているので、ご存知の方も多いと思います。僕がこの言葉を最初に聞いたのは、大学時代のゼミの教授からでした。元はヒンズー教の教えのようですが、言葉の流れ方、文章の展開の仕方、とても好きな言葉の一つです。

色々なバリエーションがあるようですが、この配列と言葉の選択が一番しっくりきます。僕のパソコンの前の壁には、いつもこの言葉が見えるように貼ってあります。

その言葉の意味通り、結論から言えば、人生を変える為には、まず「心」を変える必要がある、ということです。最初の「心」を変えるトリガー、ここが肝になります。どうしたら「心」は変えられるのか。

何か「大きな衝撃」を外部刺激として受けるのがいいのかもしれませんが、これはそう滅多にあるものではないし、こちらが予測できるものでもありません。現実的には、「小さな感動」「小さなショック」を受け続けることだと思っています。

その為にも、今自分が身を置く場所、興味のある範疇だけではなく、全く違った分野、違った世界を意識的に覗きに行く、体験しに行く積極性や好奇心を持つことなのかなと。自らの力だけで心を変革するというのは、言うは易しですが、非常に難しいことだと思っています。

今回のテーマとはずれますのでこれ以上は触れませんが、ちょっとだらけてしまっていたり、楽な方へ流されてしまいそうになった時などに、この言葉を復唱し、初心の志に戻るようにしています。
皆さんは、どんな座右の銘をお持ちですか?

執筆環境要素4 「絵画のポストカード」

これは目の前ではなく、サイドの壁際に整然とクリップで留めています。今は、マネ、ティツィアーノ、ヴァロットン、ダービーなど、時代も筆遣いも、あまり脈略はありません。美術館に行って気に入ったポスカを買ってきては、べたべたと。

ヴァロットンのポスカ煮詰まった時、息抜きしたい時に目を向けると、瞬間的に癒されます。
絵画を見る
というのは、テキストによる脳内の妄想状態において、視覚からの情報の刺激を突然入れることが、脳の発想転換にいいのかもしれません。ストーリー性のあるヴァロットンの絵画からは、いくつかの短編のヒントを得たこともあります。最近はとんと美術館に行けてないので、ポスカがほぼ固定化されています。
→【関連記事】「自小説と絵画

執筆環境要素5 「短編小説」

いつでも手を伸ばせる位置に、国内外の短編集を並べています。今あるのはバーセルミ、バクスター、マラマッド。国内では庄野潤三。短編小説のオーソリティばかりですが、インスピレーションを得るためや、小説を書く合間合間に、ごく稀に読み返す時があります。どちらかというと、積ん読であり、装飾品です(当然、一度は読んでいますが)。それほど読まないのに本を側に置くというのは、何と言うか、「お守り」みたいな感じなんでしょうね。
→【関連記事】「久しぶりのバクスター

執筆環境要素6 「うさぎ」

ひょっとすると、実はこれが小説を書く僕自身の固有環境の中で、極めて重要な要素なのかもしれないぞ、と密かに思っています。僕はうさぎを飼っています。僕が望んだものではなく、最初は娘が飼いたい、と言い出して飼い始めたミニウサギが一羽います。

朝起きると、うさぎは大人しくケージの中で丸まっていますが、しっかり目を開けて僕の入室から執筆中の姿、また支度を始める迄の一部始終をそれとなく観察しています(僕が、ではなく、うさぎが僕を、です)。

cmazy9tueaadhsu-jpg-large時々、牧草をむしゃむしゃ食べたり、じゃあじゃあ音を立てておしっこしたり、鼾をかいて寝始めたりもします。朝の4時に、です。うさぎは夜行性なのでこれが普通です。とにかく大人しく、気ままな小動物です。行儀良く座り、毛づくろいしながらも僕の視線に気付くと、すっと動作を止め、僕と視線を合わせる。だからいって、何を求めるのでもなく、小時間、じっと見つめ合っています。

確実に生命が存在しているのだという実感。その生命は、空想ではなく、想像でもなく、現実の側のルールに従い、確実に年を取り、やがて滅んでいく。そうした現実世界の「確証」のようなものを感じられるからこそ、僕は心置きなく異世界探訪が出来る。いつでも戻れる現実が、うさぎによって正しく担保されているからこそ。

絵や本という無機物では、その用はなせない。かといって、「人」ではあまりに現実に近過ぎる。音を発しない「小動物」辺りが、僕の場合は丁度いい気がします。

以上、思いつくままに書いてみましたが、他の小説家の皆さんには、また違ったそれぞれの環境作りがあると思います。
きっと、僕には想像もできないような環境の中で書いている方がいるかもしれません。
そんな話を聞いてみるのも、パンドラの匣を開ける様で楽しいかも。

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