書く作業で気をつけていること。
「手垢のついた表現」はなるべく使わないようにしている。
当たり前ながら、自身が理解していない言葉も使いたくない。
例えば「走馬灯のように思い出される」という表現。
走馬灯ってものが何なのか、僕は知らないし見たこともない。
手垢のついた表現は、長年にわたり多くの人に使われ、 きっと「言いえて妙」という部分もあって、 受け入れられやすい文言でもあるため、書き手としても つい当たり前のように使いたくなってしまう。
けれど、それゆえに言葉の組み合わせによる新鮮なイメージ喚起が起きにくくなって、言葉を厳選して短い文章の中で想像力をかきたてようとする「短編小説」にとっては、 作品の良し悪しを決する致命傷にもなりかねないから。