「プロ作家」と「素人小説家」の違い その②

高橋です。
前回からの続き、その②です。
今少し、自身のWEB小説公開遍歴にお付き合いください。

■なぜ「WEB小説」を公開するのか?

高橋熱旧サイト
▲公開直後の自サイト

それから僕は、WEBを頼りに、ネットに転がっていたフリーのテンプレートを使って、これまで書き溜めてきた小説を片っぱしからアップする作業(当然、それぞれ“落選した”小説ですから、そのままではなく、最低限のリライトは必ず行うようにしました)を進めました。これが7年前、WEBでの小説公開の始まりでした。

小説家になろう」のような「執筆サイト」の存在ももちろん知ってました。決してホームページを作ることだけが正解ではありませんが、せっかく作り方も勉強した訳ですし、元来凝り性な性格もあって、自サイトをしこしこ作って、旧作だけではなく、新しい小説も少しずつアップしていきました。ホームページは、プロバイダーが契約者に無料で提供しているものを使いました。(その頃は、まだ素人が「電子書籍」を安価で作成できるようなサービスはありませんでした)

WEBで小説を公開する目的は、「自著を、第三者の方が読んだ時、どのような感想や印象をもたれるのかを知りたい」という単純な動機でした。
それまで僕の小説を読む人は、自分以外には、顔の見えない新人賞の下読みさんしかいませんでしたから。僕が小説を書いていること自体は、家族や友人を含め一部の方は理解していますが、作品を読んでもらって感想をもらう、なんていう勇気はありませんでした。

若い頃は妻に見てもらっていたこともありますが、小説の中身が、実生活の経験に基づいたものや妻が嫌悪する(であろう)表現描写も含まれているため、遠慮が出てくるようになってしまいました。リアルな浮気や不倫小説は、妻には中々見せられるものではないですよね? あらぬ嫌疑をかけられる恐れがありますから。

ともあれ、ネットで小説を出すようになってからというもの、ダイレクトに「読者の反応」を得ることができました。ホームページを基軸として、他の色々な小説投稿サイトにアップしたり、リンクを貼ったり、多くの人に見てもらうための努力(所謂SEO対策)をしました。これを説明するだけで、恐らく1冊の本が書けるくらいの努力でした。それは今も続いています。
(ここに、WEBで小説を書いている人の誰もが味わう、個人としての「限界」を感じることになります。それはまた後ほど)

■想像を超える「読後感想」

読者の感想は様々でした。単純に一言で「面白かった」と言って頂ける人もいれば、面白い理由を分析する人、「〇〇を読んで、同じ境遇にある身として生きる希望が生まれた」と言って頂ける人もいました。

一方で、誤字脱字は元より、小説としての矛盾、事実誤認、オチの好悪、駄目だしもいただきました。良い評価、悪い評価、それはその時々でありますが、僕にとっては感想の一言一言が身に沁みました。宝物でした。これは新人賞に応募しているだけでは決して味わえないことでした。

当初は、「WEBを使って小説家デビューしよう」とか、「プロを目指そう」というモチベーションはまだありませんでした。従来通り、やはり僕にとってのプロの入り口は、「文学新人賞を獲ること」でした。あくまでもホームページで小説を発表する動機は、一般の方が僕の書いたものを読んだ時にどのような感想をもたれるのか、の一点でした。

WEB小説それから一つ、また一つと小説を書いてはWEBにアップする作業(同時並行で、各新人賞への応募は継続していました)を積み重ねていくうちに、「次作を楽しみにしている」という声も少しずつ増えていきました。学生くらいの方もいれば、主婦の方もいれば、定年を過ぎた年配の方までも。

これは一体何なのだろうと思いました。コメント欄でやり取りをしたり、その方のブログなどを拝見すると、バリバリの純文学志向の方もいれば、ミステリーや海外文学など様々でした。過去の著名な文豪の小説を読まれている方が、僕のような、いつまでたっても新人賞をクリアできない人間の書くものを「いい」と言ってくれる。忙しくて本など読む時間のないはずの子育て中の主婦の方が、「あなたの書く物は短いし、直ぐに読めるので息抜きにちょうどいい」と。

■次回作を期待される「喜び」と「楽しみ」

そうした感想を見るにつけ、僕が小説を書く意義と言いますか、もちろん、小説は大好きで、書きたくて書く自己満足の世界なのですが、僕の「自己満足」に付き合って頂ける方がこれほどいるのか、ということに驚くと同時に、僕の小説を気に入ってくれる方がいるのなら、その人たちにとって僕の存在価値は少なからずあるのではないか、と思うようになりました。

もちろんお世辞かもしれません。自惚れかもしれません。でも僕の文章を読んで、ささやかではあっても、ストレス発散できたり、生きる楽しみが増えたりする人が、もし「本当にいる」とするならば、僕は小説を書いてきて本当に良かったと、そしてこれからももっと満足してもらえる、もっと面白い小説を書いていきたいな、と思うようになりました。

次第に僕は、「新人賞を獲得してプロを目指そう」というモチベーションよりも、日本のどこかで、どこの誰かは分からないけれど、僕の小説を待ってくれている方に少しでも早く届けてあげよう、というモチベーションの方が勝っていきました。

素人小説家向けのWEBツールはその間に急速に進化し、ホームページデザインもぐっとセンスのいいものが選べるようになったり、投稿サイトも増え、電子書籍を個人で制作販売できる仕組みなど、プロではない素人作品でも、世に送り出してくれるインフラが次々と提供されていきました。それが今はKDP作家群(Kindleのシステムを使って電子書籍を自費出版している素人小説家)となっている訳です。

僕が新人賞ではなくWEBの世界に足を突っ込んでいく経緯は、以上でお分かりになったかと思います。
表題のテーマから少し話がずれてきているので、次回では話を元に戻します。(→次に続く

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