生臭さ

「何の臭いかしら」と妻が言った。私はひと風呂浴びてちょうど食卓についたところだった。「臭わない?」皺の寄った眉間の塹壕を更に深めて、妻は鼻から小さく息を吸った。「そう?」 慢性的な蓄膿体質もあり、鼻の利く方ではなかったの...

白髪2

白髪をめぐる小品2

 日曜午後の「白髪抜き」は、我が家ではもう習慣になっていた。ソファに寝そべってテレビを見ている俺の髪の中から、まるで「宝物」でも探し当てるように白髪を見つけては、千枝は途中で切れないよう細心の注意を払って根元から静かに引...

白髪1

白髪をめぐる小品1

 日曜午後の「白髪抜き」は、我が家ではもう習慣になっていた。ソファに寝そべってテレビを見ている父の髪の中から、まるで「宝物」でも探し当てるように白髪を見つけては、途中で切れないよう細心の注意を払って根元から静かに引き抜く...

Suicaのペンギン

「あの絵を見ると頭が痛くなるの」と、女は言った。 眩暈を覚え、立っていられなくなることもあった。頭にこびりついた映像をそぎ落とすまでに、一日布団から出られず、また夢にうなされ、その度に何度も汗びっしょりになって布団から跳...

夜道

 気力、体力共に参っていた。このところ、睡眠時間もほとんどとれていなかった。残業が恒常化しているにも関わらず業績は一向に良くなる気配もなく、従って、給料が増えることもなかった。 自宅までの帰途、私は住宅地の中を亡霊のよう...